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広島テレビ様 LAWO mc²56XC, mc²36を導入!
なぜLAWOを選択したのか?
2018年9月に稼働開始された広島テレビ様のスタジオ・システムに、LAWOのmc²56デジタル・ミキサー・システムと mc²36可搬サブ・コンソール、インターカムはRIEDEL Artistシリーズ、そしてスタジオPAではd&b audiotechnikのスピーカー・システムをご採用いただきました。
今回は音声システムをご担当された営業・コンテンツ本部 技術局 制作技術部の野田 竜矢様に設備のアウトライン、システムを検討される際に重要視したポイントなどをお伺いしました。サブとスタジオのクロス運用を想定したシステム設計など興味深いお話をお届けします。
新社屋概要
まず最初に、昨年カットオーバーした新社屋の概要を教えていただけますか?
今回の新社屋移転に伴い2つのスタジオサブ(1SUB、2SUB)と2つのスタジオ(Aスタジオ、Bスタジオ)での運用を基本に設計・プランニングを行いました。スタジオサブは 1SUB が主に報道、2SUB は制作・受けサブを主とした運用としていますが、限定した運用とせず番組内容に応じて柔軟に運用出来るシステムを目指しました。よって1SUB と2SUB の機材構成はほぼ同一仕様としました。スケジュール的には2018年3月15日に建物が竣工しました。その後6月までの3ヶ月間で制作設備工事を行い、7月〜8月の2ヶ月間をトレーニング期間に充てました。初運用はカットオーバー前の8月上旬に番組収録からスタートし、8月下旬の24時間テレビの中継を経て2018年9月23日にカットオーバーしました。
番組に応じてクロス運用
スタジオ側の概要を教えて頂けますか?
Aスタジオは390 m²、平日夕方ワイドのセットと日曜スポーツ番組のセットにヴァーチャルセットを常設しています。Bスタジオは140 m²、昼・夜ニュース用キャスターテーブル、天気セット、クロマキーセットを常設しました。
普通はサブコンとスタジオの名前は一緒なのですが、広島テレビ様はサブコンは「1SUB」「2SUB」と数字表記、スタジオ側は「Aスタジオ」「Bスタジオ」とアルファベット表記と違う名前にされていますね?
はい。冒頭に申し上げた通り、2つのサブコン,2つのスタジオを1対1で紐付ける事無く、番組に応じてクロス運用出来るようにしています。名称を1SUBと1スタジオとしてしまうとサブコンとスタジオの関連性が強くなってしまうのであえて違う名称にしました。
1Fにはホールが併設されているのですか?
床面積は200 m²、座席数96名収容の多目的ホールです。ホールには回線ラックを設け、玄関前・エントランス・建物外(エキキターレ)にCN盤を設置して24時間テレビやイベントの中継に使用します。もちろん放送設備フロアーや屋上との回線も確保してあります。
音声システム設計
それでは音声システム設計のキーポントを聞かせていただけますか?
放送設備ですから、安定性・メインテナンス性は最重要視しました。それに加えて10年以上使用するシステムですが今後の新技術に対応出来ることも大切です。具体的にはケーブル1本で多チャンネル伝送できるAoIPを中心にして、素材共有・分配が柔軟且つ容易に出来るようにしました。結果として機器構成がシンプルになりコスト面とのバランスも取れたシステムを構築できました。
今回のシステムの検討やメーカー選定のプロセスを教えて頂けますか?
システムの検討期間としては
・2015年秋 仕様検討 着手
・2016年8月 各メーカーに仕様書 送付
・2016年9月 IBC ショーにて各メーカーの動向などを視察
・2017年2月〜 メーカー決定後,詳細打合せ
・2017年11月 ミキサー立検
・2018年1月 システム立検
という流れで進めました。
この後建物竣工と同時に放送設備工事開始となりました。
LAWOを採用した理由は導入実績
今回LAWO社のシステムをご採用いただき,弊社がシステムインテグレーター(SI)として設計・施工まで担当させていただきました。
各社からの提案を検討した結果、LAWOのmc²56XCコンソールを中心にシステムでSIをオタリテックさんに依頼しました。
LAWOを採用した理由としては
・海外で導入実績多数あり、国内でもNHKやキー局を中心に導入が進んでいる点
・LAWO社の社内で製造・検品を行い高い品質管理体制が故に故障やトラブルが少ない
・仕様書の条件である「AoIP」に対応している点
・AES67準拠した規格(RAVENNA)で,IPライブプロダクション(ST2110規格)に互換し,
将来展望として映像・音声オールIP化を見据えたシステムをすでに実現している点
を評価しました。最終的には構成内容・見積金額・導入実績・サポート体制など総合的に判断し、
2017年1月役員プレゼンを経てオタリテックさんにお願いしました。
ネットワーク・ゲイン補正機能
ありがとうございます。実際の工事に入ってからご苦労された事はございますか?
事前打ち合わせや立検をしっかり行っていたのと、現場のコーディネイトをして頂いたクレセント様や工事スタッフの皆さんとのチームワークも良く実際の所、放送設備工事であまり苦労した記憶はないんです(笑)むしろ,竣工前の建物設備(館内布線,ケーブル通線口,部屋の設え,フリアク割図など)の調整のほうが大変でした。
運用を開始して9ヶ月が経ちます。
全てが新規のシステムですから多少のトラブルは覚悟していましたが大きなトラブルもなく本当に安定して動いています。番組毎デフォルトのプロダクションを作っているので,卓の設定は瞬時に変更できますしフェーダー配列を多少入れ替える程度ですぐにオペレーションに入れます。
またLAWOのRAVENNA AoIPを採用した事で、ネットワーク・ゲイン補正機能「IP-Share™ Gain Compensation」が実現しました。これは各スタジオのワイヤレスマイクなど1つのHAを2つのサブでそれぞれのHAの値をキープ出来る画期的な機能です。この機能のおかげで1SUB、2SUBそれぞれで設定ファイルのSave/Loadを行っても他方のミキサーには影響しないため安心して仕込みが安心して行えます。
ありがとうございます。それでは最後になりますがインカム、PAを含めた広島テレビ様の特徴を教えていただけますか?
番組毎に使用するサブを替えるクロスオーバー運用をこのシステムでは
1. LAWOに番組毎の設定ファイルを流込む
2. RIEDELインカムMTRXにも同様に設定ファイルを流込む
3. スタジオPA切替のスイッチを押す
このわずか3ステップで実行出来ます。
複数のエンジニアがオペレーションするスタジオワークにおいて、このシンプルな操作環境はとても重要なファクターとなっています。
持出用インカムもRIEDEL
それから広島テレビでは持出用インカムシステムもRIEDELで構築しており、特番等で大規模な連絡線構築が必要になった際,サブのインカムシステムとのドッキングも出来るようにシステムアップしました。
PA設備はd&b E8 + E15X-SUBを採用
PA設備ではスピーカーにd&b audiotechnik社のE8 + E15X-SUBを採用しました。国内の著名なホールでも多数採用されているd&bはスタジオPAでも多目的ホールでもコンパクトでありながら十分な音質とパワーに満足しています。
ありがとうございました。アフターフォローを含め広島テレビ様の今後の番組制作のお手伝いが出来るように対応して参りますので今後とも宜しくお願いいたします。
宜しくお願いいたします。