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ビョークのツアーを彩るd&b Soundscape
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(当記事は、2019年11月19日に『cornucopia』ツアーの一環として行われた、ロンドンのO2アリーナでのコンサート後に執筆、公開されたものです)
アイスランド音楽界を象徴する存在でありパフォーマンスアーティストとして知られるビョークが『cornucopia』ツアーにd&b Soundscapeサウンドシステムを採用しました。ビョークは、米国とメキシコでそれぞれ1200人と5000人の観客を動員したコンサートを終えた後、ロンドンのO2アリーナで2万人のファンを前に公演を行いました。ここではこれまでで最大規模のSoundscapeセットアップがd&bパートナーのSouthby社によって実装されました。
ビョークとd&bの関係は、約20年前、彼女が英国でのコンサートに当時発売されたばかりのC4ラウドスピーカーを選んだことに始まります。それから20年後、ビョークは新しいツアーに向けて、北欧の離島の灯台にある小さなスタジオで、そして大きなリハーサル・スペースではより大きなセットアップを使って、Soundscapeでの実験に取り掛かりました。ツアー初公演は、ニューヨークのアートセンター「The Shed」で行われました。このコンサートでは、観客を全く新しいサウンドの世界に没入させた360度のSoundscapeの力が露わになりました。非常に厳しい評価で知られるニューヨークのメディアは、このコンサートを「この街の舞台をこれほど見事に光と音で飾ったものはなかなかない」と報じました。
O2アリーナの公演では、この会場の密なスケジュールのせいで、トラックやクルーが搬入を始められたのは当日の朝5時からでした。展開可能なシステムを午後4時までに実装するために、サラウンドサウンドなしのシステムを構築し、ステージの幅いっぱいにサウンドフィールドを広げることに焦点が絞られました。d&b Soundscapeの180度構成は、要件に完璧に対応しました。
ショーは、会場のライトが落とされ、18人の少年少女からなるアイスランドの伝統的な合唱団がステージに登場するところから始まりました。FOHのエンジニアであるジョン・ゲール氏は合唱団のメンバーそれぞれにヘッドバンドでマイクを付けてもらうという選択をしました。これが左右対称のシステムであれば、シビランスが発生して合唱全体の均一性が損なわれる可能性があります。しかしここではそんな心配も要りません。Soundscapeでは、シビランスは各メンバーの位置を明確にしてくれるものとなり、横一列に並んだ合唱団が、視覚的にも音響的にも美しい一貫性を生み出しました。
そして、ビョークとミュージシャンがステージに登場。最初の瞬間から、Soundscapeの存在理由は明らかで、余裕のある、ワイドなサウンドが会場全体に響きましたミキシングのジョン・ゲイル氏がぴったりの音響効果でその実力を発揮し、楽器とこれまで以上に迫力のあるビョークの声から生まれるエネルギーと音色を際立たせました。
会場内で動き回ることができればSoundscapeの本当のパワーを実感することができます。どこにようとも、サウンドと目に入ってくるビジョンがぴったりとマッチするからです。右側の観客は右のサウンド、左は左、などといったサウンドではありません。この会場ではまるで、歌手と各ミュージシャンが観客一人ひとりと個人的なコミュニケーションをとっているかのような、真の自然さを感じさせるサウンドフィールドが生まれました。
O2アリーナは、ステージから100m先までの空間に最大2万人の観客を擁する会場です。ステージの幅も38mとワイドなものになっています。この会場のためにサウンドチームは12台のKSLからなるフロントクラスタを5つ、14台のVからなるエクステンションクラスタを2つ、16台のVからなるアウトフィルクラスタを2つ配置し、フロントフィルとして12台のY10P と4台のV7P、そしてディレイとして6台のV8からなるスタックを4つ加えてセットアップを完成させました。8台のSL-SUBをフライングさせ、20台のSUBからなるアレイは地面にスタックされました。アンプにはD80とD20を68台、プロセッサーはDS100を2台とDS10を7台使用しました。
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