前回の振り返り
- オーケストレーションの「プラン」ステップでは、テンプレートとリソースプールを用いて最適な予約を実施
- リソースはオンプレ/仮想/クラウドを横断し、性能・ロケーション・ネットワーク要件に基づき選定
- ネットワークのトポロジーや帯域も評価され、リソース間の整合性が確保される
前回は「リソース予約と構成テンプレート」によって、イベントや番組に必要なリソースを事前に確保する方法について見てきました。このブログでは、次のステップである「制御」=予約済みリソースの設定・運用管理について見ていきましょう。

制御とは何か?
予約だけでは不十分であり、それらのリソースを実際に操作・接続・構成していく必要があります。制御ステップでは、番組のライフサイクル全体にわたって、リソースに適切な設定を施すことが求められます。
主な制御対象
- 番組前の初期設定(例:信号接続、マルチビューア設定)
- 番組中のリアルタイム制御(例:UI操作、信号切替)
- 番組終了後のリセット(例:設定解除、解放)
自動制御とプリロール
イベント開始に先立って、オーケストレーターは以下のような初期化操作を自動で行います。
- デバイス設定の適用(例:ビデオサーバーにプレイリストをロード)
- スタジオ構成の変更(例:HDからUHDへの切替)
- 接続パスの確立(例:CCUとRCPの接続)
このような準備段階を「プリロール(事前状態)」と呼びます。
番組中のリアルタイム制御
番組中は、人による操作が必要となる場面も多く、ソフトウェアUIやハードウェアパネルによって手動制御が行われます。
主な操作方法
- ソフトUI(Webダッシュボード、タイムラインビュー)
- ハードパネル(ロータリーノブ、レバー付きボタン)
制御例
- 信号の切替、ルーティング
- 音声・映像パラメータの変更
- タリーやUMD表示の更新
番組終了後の解除・リセット
番組が終了したら、使用済みリソースは計画的に解放され、次の番組に備えた状態に戻されます。
- 設定の初期化
- 信号パスの削除
- 状態の「使用可能」への復帰
ライフサイクルサービスオーケストレーション(LSO)
これらの制御全体は、「開始/終了」だけでなく、番組のライフサイクル全体に沿って管理されます。これをライフサイクルサービスオーケストレーション(LSO)と呼びます。
LSOのフェーズ例
- プリロール:準備完了前
- スタート:番組実行
- ストップ:番組終了
- リリース:状態解放・次への準備
マルチベンダー制御とプロファイル
ベンダーごとに異なるAPIや機能を抽象化するために、「プロファイル」という制御テンプレートを活用します。
プロファイルとは?
- 機器に対して必要な制御項目(例:マルチキャストIP、ビットレート)を定義したテンプレート
- 各ベンダーのコマンドへ自動変換
効果
- ベンダーロック回避
- サービス状態に応じた制御の自動切替が可能に
SDN・BCコントローラーとの連携と信号接続
制御の中でも、信号接続(クロスポイント設定)は特に重要です。
- オーケストレーター → SDNコントローラーへ直接指示
- オーケストレーター → BCコントローラー → SDNへ中継
- BCコントローラーが直接SDNへ指示する構成も可能
SDNおよびBCコントローラーとのスムーズな統合を実現するには
全てのコントローラーが1つのシステムで提供されていない場合、オーケストレーターは以下のように役割分担と連携を図る必要があります。
- オーケストレーター:リソース予約・初期設定・番組ベースの設定配信
- BCコントローラー:オペレーターによるUI操作、信号ルーティング
- SDNコントローラー:ネットワーク制御と接続実行
このように連携することで、システム全体の整合性と柔軟性が確保されます。
今回のまとめ
- 制御ステップでは、予約済みリソースに対する初期設定・接続・制御・解除を実行
- イベントの開始/終了に加え、「プリロール」など中間状態を含むLSOが重要
- ソフトウェアUIとハードウェアパネルを活用し、リアルタイム操作を支援
- 異なるベンダーの制御には「プロファイル」による抽象化が有効
- SDN/BCコントローラーとの連携設計によって、柔軟で安定した制御が実現される
結論と次回予告
制御は、リソースを「使えるようにする」だけでなく、「使われる過程を管理する」ステップでもあります。
次回(第5回)は、制御と密接に関連する「監視」について取り上げます。
システムの状態をどう把握し、サービス品質を保つのかを見ていきましょう。
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