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「未来を作曲する」— EXPO 2025 大阪・関西万博 オーストリア館でのLawoテクノロジーを用いたイマーシブサウンドインスタレーション


オーストリアはEXPO 2025 大阪・関西万博において、未来を探求するだけでなく、それを「建築」「コンテンツ」、そして何よりも「音楽」を通じて体感できるパビリオンを出展しています。パビリオンのエントランスホールで来場者を迎えるのは、メインテーマ「未来を作曲する(Composing the Future)」を芸術的かつ技術的に表現した、視聴覚インスタレーションです。

EXPO-Aufnahmen im Max-Schlereth-Saal (Copyright: Christian Schneider, Universität Mozarteum)

自動演奏のグランドピアノが、目に見えないオーケストラとライブで共演しているかのような演出がなされます。これは、MIDI制御による楽器演奏と、プロフェッショナルスタジオ水準のマルチチャンネル音声録音を完璧に同期させたパフォーマンスなのです。

この精巧な音響インスタレーションの技術的実現を担ったのは、ザルツブルク・モーツァルテウム大学であり、同大学はこのプロジェクトにおいてIPベースのLawoテクノロジーを採用しました。

未来の音楽的ビジョンを実現するハイエンド制作環境

このインスタレーションの音響制作は、ザルツブルク・モーツァルテウム大学内のマックス・シュレレト・ホールで行われました。制作チームは、同ホールに近年の近代化プロジェクトの一環として導入されたIPベースのLawo製プロダクション・インフラを活用しました。
使用された機材には、48フェーダーを備えたmc²56コンソール、冗長化されたA__UHDコアユニット、A__stage64およびA__mic8音声入出力インターフェース、そしてLawo HOMEによるIPネットワーキングが含まれます。
このIPインフラ管理プラットフォーム「Lawo HOME」は、すべてのネットワーク接続されたリソースへの直接アクセスを提供し、直感的なユーザーインターフェースを通じて、システム全体の集中管理と設定を可能にします。

オーケストラの録音は2段階で行われました。まず最初に、ベーゼンドルファー・エンスパイア(自動演奏機能付きグランドピアノ)を使ってピアノパートを演奏し、そのMIDIデータとオーディオ信号の両方を収録しました。
次のステップでは、録音したオーディオトラックを指揮者と演奏者のヘッドフォンに再生ガイドとして提供し、それに合わせてオーケストラが演奏しました。これにより、ピアノの生音に干渉されることなく、完璧に同期した演奏が可能になりました。
録音にはLawo A__stageインターフェースが使用され、7.1チャンネルのマイクアレイと追加のスポットマイクを通じて、各楽器・セクションが収録され、ミックス作業はmc²56コンソールで行われました。

Lawoコンソールの柔軟なルーティングおよびモニタリング機能により、MIDI制御されたグランドピアノとオーケストラ録音の音量バランスを精密に調整することができました。
さらに、動的なオートメーション機能や、直接制御可能なWaves® SuperRackプラグインの統合により、オーケストラの奥行き、空間的な明瞭さ、そして極めて高い透明度を兼ね備えた、きわめて精緻な音響表現が実現されました。

高い精度で同期するインスタレーション

パビリオン内では、万博開催期間中を通してこの音楽インスタレーションが安定して稼働するよう、自動制御システムが導入されています。
メディアサーバーが、ベーゼンドルファー製グランドピアノのMIDIデータと、マルチチャンネルのオーケストラ録音の再生を統括して制御しています。
音声出力は、空間に最適化されたマルチチャンネル音響システムを通じて行われ、来場者に対して、まるでピアノとオーケストラが実際にその場で共演しているかのような没入感あふれるリスニング体験を提供します。

物理的なグランドピアノと録音済みのオーケストラ演奏が完全に同期している様子は、このプロジェクトの高度な技術力を示すものですが、来場者がまず心を動かされるのは、その音楽が生み出す感情的な響きでしょう。

パビリオンに導入された統合型メディアおよび制御システムにより、この再生環境は完全自動化されており、冗長構成による高い信頼性と、継続運用に耐える安定した再生品質が確保されています。
この音響インスタレーションの明瞭な音像と立体的な空間表現は、今回の制作で使用されたLawoテクノロジーによって大きく支えられています。

世界水準のスタジオ・インフラ

こうした複雑なプロダクションへの対応に向けて、ザルツブルク・モーツァルテウム大学では近年、音響コントロールルームの近代化を実施しました。
同大学は、Lawo mc²シリーズのコンソール(mc²56およびmc²36 xp)を導入し、音響技術を完全にIPベースへと移行。その結果、現在のインフラは最高レベルのプロフェッショナル基準を満たすものとなっています。
また、LawoのHOMEプラットフォームにより、複数のコントロールルーム間でのネットワーク運用が可能となり、全信号への高速アクセスやセッション管理の大幅な効率化が実現されています。

この技術基盤は、今回のEXPOプロジェクトでその力を存分に発揮しただけでなく、日常の教育現場においても大きな利点をもたらしています。
学生やスタッフは、マイクの設置から、複雑なマルチトラック録音、自動ミキシング、最終マスタリングに至るまで、プロフェッショナルなワークフローを実践的に学ぶことができます。

つまり、EXPO向けに制作されたこのインスタレーションは、オーストリアのイノベーションのショーケースであるだけでなく、実践的な音響教育における重要なマイルストーンでもあるのです。

このインスタレーションを通じて、EXPO 2025 大阪・関西万博におけるオーストリアの出展は明確なメッセージを発信しています:
技術的卓越性に支えられた「音楽を通じた未来への架け橋」——まさに「Composing the Future(未来を作曲する)」というテーマを体現する取り組みです。

Tonregie A mit Peter Schmidt (links) und Christoph Feiel (rechts) – (Copyright: Christoph Feiel, Universität Mozarteum)

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