2017-09-12

LAWO コンソール,米国 Aspen Music Festival and School で活躍

世界で最も有名なオーケストラ音楽フェスティバルの 1 つを催してきた「Aspen Music Festival and School」(AMFS としても知られています)は 2017 年に第 68 回を迎えました。

先頃終了したばかりの AMFS は毎夏 8 週間にわたって,複数の会場での 400 以上の演奏イベントによってクラシック音楽愛好家を楽しませ,その多くは世界中の聴衆に向けて放送されます。

このようなメジャーな音楽フェスティバルでは音質は極めて重要です。そのため,過去にこのイベントを援助するために LAWO が選ばれてきました。

「芸術に対する LAWO のコミットメントは Aspen さんが大切にしている創造性の目指すところと完全に一致します」と Lawo North America セールス代表者 Michael Mueller が語ります。「私たちがこの名高い音楽フェスティバルのお役に立ちたいと考えた理由がそれです」。

音楽が彼らのミッション
AMFS のミッションはクラシック音楽におけるプロフェッショナルなキャリアに向けて学生たちを訓練・教育することで,毎年のフェスティバルはこのミッションの派生物です。フェスティバルのシーズンごとに AMFS はキャンパス内外や様々なシンポジウムやマスタークラスでの 400 回もの演奏を行っています。

しかしこのフェスティバル目玉は,コンサートホールの音響と屋外テントのアンビエンスとを結び付けたと言われている 2,050 席の「Benedict Music Tent」です。これは,各演奏の放送品質のステレオ・ミックスと同時 5.1 サラウンド・ミックスを作成する AMFS の LAWO『mc²56』ミキシング・コンソールが重要な役割を果たす場所でもあります。これらのミックスはデジタル録音され,American Public Media や SiriusXM,Colorado Public Radio,Aspen Public Radio の KAJX-FM,EBU のような放送パートナーたちが後日使用できるように,同校の「Edgar Stanton Audio Recording Center」(ESARC)によってアーカイブされます。

AMFS はフェスティバルを音声技師たちの学習の機会としても利用しています。「フェスティバル中,私たちは 200〜250 のイベントを担当します」と ESARC 主任音声技師 Scott Wynne 氏。「何度もいらっしゃるエンジニアも何年かありましたが,ときにはまったくの新人さんも来ます。何人かは LAWO や Neumann のような会社の機材を使うのはこれが初めてということもあります」。

こういった活動すべてがわずか 8 週間という短かさで行われますので,音声技師には無駄にできる時間がほとんどありません。「音声制作ディレクター Lisa Nigris,メディア技師長 Dan Gonko,4 人のシニア音声技師,3 人の録音技師,3 人の助手技師を含めて 13 人の音声技師がいます」と同氏。「どの演奏会も最低でも録音に 2 人の技師とライブ音響ミキシング用にもう 1 人を必要としますが,大掛かりな制作(例えば Renée Fleming によるコンサート)では全員が現場に出ます」。

mc²56 – 選ばれたコンソール
ある気前の良い後援者からの寄付のおかげで,先だって AMFS は 32 フェーダーの LAWO『mc²56 MkII』ミキシング・コンソールならびに 32 チャンネルのマイク・プリアンプと 16 チャンネルの音声入出力構成にした LAWO『DALLIS』フレームのリース・トゥ・オウン契約を LAWO と結びました。

「2 年前,当校の古い卓がシーズンの中頃に壊れてしまいました。これが引き起こしたストレスを想像できますよね」と Aspen の音声制作ディレクター Lisa Nigris 氏は回想します。「5.1 録音とステレオ録音のニーズが混ざった独自のニーズがありますので,私たちの要求事項を扱える他のコンソールを見つけることは本当に困難でした。LAWO の人たちや 2〜3 の他のメーカーとお話をして,コンベンションが再度やってきた前年の AES で議論は真剣なものとなり,LAWO が焦点となりました。LAWO さんはスポンサーとして 2016 年のシーズンの全期間にわたって機材を試すことを喜んで許可してくださいました。何とも思いがけない幸運です」。

Wynne 氏が説明するように,AMFS の録音のニーズはライブ・サウンドと音声のアーカイブ化と放送活動が混ざっているため独特なものになっています。「私たちはサラウンド・ミックスは行いませんがステレオにダウンミックスします」と同氏。「私たちはコンソールの個別レイヤー上でディスクリートなミックスを作りますので,あるレイヤー上での動きは他のものとリンクしている必要があります。多くのコンソールはこの種の作業ができませんが LAWO はできます」。

「私たちはニューヨークでの AES ショーに行って沢山の会社と話しをしましたが,「DiMenna Center for Classical Music」で LAWO コンソールが使われているのを見て,私たちの卓はこれだと分かったのでした。LAWO さんは「畏まりました,当社のコンソールはお客様が必要とすることを行わせることができます」などと言う必要はありませんでした。私たちが必要としていた機能はすでに組み込まれていましたから」。

「当校の面談などで LAWO コンソールを使えることを売りにすると将来のエンジニアたちは大いに食い付いてきます」と Nigris 氏が付け加えます。「誰だって《The Tonight Show》やオリンピックが使ったのと同じ卓を使えるようになりたいですよね?」

「LAWO『mc²56』にはテント内での作業をずっと簡単にしてくれる沢山の機能があります」と語るのは録音とラジオの生放送とインターネットのストリームの品質管理を監督するメディア技師長 Dan Gonko 氏です。

Gonko 氏は『mc²』の最も良い特徴の 1 つはその柔軟性であると言います。「このコンソールは奥深いですが,とても理解し易いようにレイアウトされています。多くのコンソールは使い易さとカスタマイズのし易さを併せ持たないのです。10 回程度のミキシングを行うために,エンジニアが 1 時間のトレーニング・セッションに参加すると,わずか 30 分で個々人の盤面レイアウトを徹底的にカスタマイズできるようになることが LAWO の使い易さを雄弁に物語っています。

「また,エンジニアごとに卓のレイアウトを実際にカスタマイズできる能力も大きいです。このコンソールではフェーダー・コンフィギュレーションの 6 つのバンクを利用でき,そのそれぞれが 2 つの異なるレイアウトを持ちますので 12 個のカスタム・セットアップが可能で,このことは各エンジニアがコンサートごとにそれぞれの個人的なワークフローに合わせて盤面をカスタマイズできるということを意味します。

「『mc²』のプロセシングの品質は素晴らしいです。コンプレッサーの動作やリミッティングや EQ はどれも非常にニュートラルです──クラシック音楽の仕事に本当に必要なことです。音に色付けする処理は要りません。若干のコンプレッションや EQ をマイクに追加でき,それを無色透明なサウンドにできること──文字どおりそこにあることが聴いてもわからないようにできること──は凄いです」。

Gonko 氏はコンソール内蔵のデジタル・ディレイ・システムも気に入っています。「入力ディレイを調節できる能力は本当に便利です」と同氏。「ホール内にいて,主に吊り下げた Decca ツリーを用いてライブ・ミックスを行いますので,スポット・マイクに遅延をかけてそれらの到着時間を Decca ツリーと合致させられることが重要です。そしてこのコンソールのディレイ解像度はミリ秒の 1/100 まで行きますので素晴らしいです。自分たちのミックスをあんな度合いまでピッタリと合わせることができるのは驚くべきことです」。

そして最後に Gonko 氏は次のように語ります:「内蔵 LUFS メータ表示が素晴らしいです。録音するステレオやサラウンドのミックス全体を圧縮したりリミッターを掛けることは実際にありませんが,演奏中にラウドネスの面で何が生じるかを確認できるのは,放送法規をクリアするまであとどの程度調節しなくてはならないか分かりますからポスト作業が捗ります」。

未来への備え
機材選定の場合と同様に,今の決断がこの先,技術的に何が可能かに影響します。LAWO を得たことによって AMFS は新たな展開にも準備できています。

「録音時の私たちのミッションは単純にイベントを捉えることで,もちろん可能な限り高音質での録音が期待される「The American String Quartet」や Robert McDuffie と Michael Mills の《ヴァイオリン,ロック・バンドと弦楽オーケストラのための協奏曲》の初演アンサンブルも対象となります」と Scott Wynne 氏。

「しかし,録音と放送用のミキシングとは大いに異なります。LAWO や Neumann,DPA,Grace Design,Millennia Media のようなスポンサーは,求められる品質水準を達成する助けとなってきました。新技術の発展が如何に速いかを考慮すると,このことは私たちにとって特に重要です。私たちは自問しなくてはなりません:特定のメーカーと結びついていないがゆえに RAVENNA が優勢になったらどうする? 私たちの放送パートナーが自動車内のリスナーに向けて Dolby Atmos で放送したいと決定したらどうする? 96 kHz のサンプル・レートを用いて音声を配信する必要になるのはいつ? ── 今のところ答えは得ていません」。

Wynne 氏は続けます:「LAWO コンソールで素晴らしいのはほぼ無限に柔軟であることです。私たちは LAWO と協働して私たちの新しいニーズに合うように『mc²』の DSP リソースを適合させれば済みます。次に何が来ても私たちは準備ができています」。

Aspen Music Festival and School について
1949 年設立の Aspen Music Festival and School は米国最良のクラシック音楽フェスティバルの 1 つであると見なされており,その演奏会の選曲と若い音楽学生たちの音楽トレーニングの両方に注目されています。通常,8 週間の夏シーズンには 5 つのオーケストラによるコンサート,ソロや室内楽の演奏,舞台上演されるオペラ制作,マスタークラス,レクチャー,子供向けのプログラムを含む 400 以上のクラシック音楽イベントが行われ,100,000 人の聴衆を集めます。冬季には AMFS は小リサイタル・シリーズと Metropolitan Opera Live の HD 上映を行っています。詳しくは www.aspenmusicfestival.com をご覧ください。

写真:Alex Irvin